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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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David Cross(ex.KING CRIMSON)
+ 是巨人(吉田達也ds, 鬼怒無月g, ナスノミツルb)

8/27(土)吉祥寺Star Pine's Cafe のライヴへ行ってきた。日本のクリムゾ
ン・フォローワーとして知られるプログレ・バンド:美狂乱の須磨邦雄氏のご
子息:須磨和声くんと一緒に観てきた。先に須磨和声くんを紹介しておくと、
武蔵野音大卒業のバイオリニスト、お父さんのバンド:美狂乱のアルバムに参
加したり、現在はバイオリニスト:中西俊博氏のアシスタント(平たく言うと
ボーヤ)をやっておりコネクション拡大中。そうと遠くない将来、お父さんの
知名度を軽く越すのではないかと思われる。頑張れ!

その須磨和声くんから須磨邦雄氏のソロ・アルバムのデモをちょっと聞かせて
頂いた。美狂乱の延長線上と思って買うと拍子抜けするかもしれないが、むし
ろ美狂乱よりもずっと幅広い音楽性は、須磨ワールド全開という風で、あらゆ
る音楽に興味のある人には楽しいアルバムになりそうだ。来年リリースするら
しいのでファンの方はお楽しみに。

で、David Cross + 是巨人(吉田達也ds, 鬼怒無月g, ナスノミツルb)だが、
この日のセットは、前半は是巨人のみの演奏。須磨和声くんは、気にいってア
ルバムを購入したようだった。が、僕はどうにも、今更な70年代キング・ク
リムゾンの諸所のフレーズに出てくる小ミニマル(反復)変拍子を拡大し、音
量をへヴィーにした風のサウンドは正直聴き飽きていて「ここから何の発展性
を見出せるのだろう?」という疑問ばかりが広がってしまった。しかも、鬼怒
さんのギターは、こういう定フレーズには向いていないようで、もたついた演
奏に聴こえてしまった。ギターのカッティングにメリハリがない。鬼怒さんの
ギターは、むしろインプロビゼーションで独立したパートを自由奔放に弾いた
方が一際冴えるのに、それを活かした曲構成となっていなかったため、余計に
残念な気がした。また、吉田氏もジャンルを選ばない器用なドラマーであり、
かなりの技術があるのだから、こうした音楽構成はもったいないのではないか
?と思ってしまった。リズムや変拍子で展開し、音を重ねていく模範としては、
世界のどこを探しても仙波清彦氏率いるユニット・センバに勝るバンドはいな
い。ユニット・センバのライヴを多く体感している僕には、是巨人の音楽はか
なりチープに聴こえてしまったのだ。

さて、後半になって是巨人に加えてデヴィッド・クロスをリーダーにした演奏
になると、これがさきほどまでの是巨人かと思うとほど冴えきった緊張感溢れ
る演奏に変身した。デヴィッド・クロスのバイオリンに、是巨人の非常に強弱
のあるメリハリのある演奏が重なり、なんの真似でもないデヴィッド・クロス
の音楽世界を繰り広げていた。特に声楽ヴォイスの現代音楽のようなオケ?に
合わせて、バイオリン、ベース、ドラム、ギターが絡んだ演奏は圧巻だった。
こうした演奏を聴くと、クロスが今回、クリムゾンの演奏を拒否したというこ
とも頷ける。はっきり言ってクリムゾン時代のデヴィッド・クロスより格段に
アイデアのある演奏が聴けたし、自分の音楽というものを全面に出した自信の
ようなものも感じた。かつてのキング・クリムゾンのバイオリニストというレ
ッテルはもう不要だろう。頭の薄くなった穏やかで物腰の柔らかいクロスは、
自分の音楽の創造に走り出した。いっそのこと、クラシック界の奇匠?バイオ
リニスト:ギドン・クレーメルのように、自由奔放に暴走をして欲しいものだ。