━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『メタリカ:真実の瞬間』配給:パラマウント

試写会へ行ってきた。ローリングストーン誌インタビューでの「これはメタリ
カについての映画ではなく、人と人との関わり合いを描いた映画なんだ」とい
うラーズ・ウルリッヒ(Dr.)のことばがこの映画のすべてをもの語っている。
普通なら撮らないであろうバンド解散危機の最中を辛抱強くカメラを回し続け
ることで、奇跡的に収録できたヒューマンストーリーと言って良い内容だった。
メタリカのレコーディング、ライヴ風景はあるものの1曲丸々演奏した映像は
ここには存在しない。にも関わらず、メタリカのメンバー個々の人間としての
成長、真実のコミュニケーションのあり方を通して、新生した生のメタリカを
この映画はしっかり捉え、ヘヴィ・メタルのファンでなくとも感動を与えてく
れる。メタリカに対する知識は全くなくても大丈夫だ。あるいは解散し映像が
無駄になる可能性すらある中で、コミュニケーションと諸処の問題解決のため
のセラピスト(カウンセラー)を送り込んでの長期に渡るレコーディングは、
中断も含めて3年間に及んだ。様々な予期せぬ出来事、変化していく感情は、
作り物でない真実の姿を浮き彫りにしていく。それが徐々にバンドとしてひと
つ方向にまとまっていく過程とアルバム『セイント・アンガー』の制作過程と
がリンクし、映画をさらに素晴らしいドキュメンタリーへと導いていった。
 
140分に凝縮されたストーリーは、メタリカだけのものではなく、人生の様
々な場面で僕らが直面する「コミュニケーション」の問題そのものである。真
剣にその問題に取り組むなら、解決だけでなく感動的な人間関係を築き上げる
ことができることをこの映画は教えてくれるだろう。

僕のミュージック・ビジネス講座では、「コミュニケーションの成立」という
メンタルな側面を強調した考え方をベースに教えている。たとえビジネスであ
っても、「コミュニケーションの成立」がなければ、仕事として成立しないで
あろうし、たとえ形の上では仕事にはなったとしてもそこに「感動」はないだ
ろう。ましてエンタテイメントな世界は、クリエイター(パフォーマー)とビ
ジネスという対極した価値観が手を取り合ってひとつひとつの仕事を完成させ
ていかなければならない。最近は、社内にカウンセラーを置く企業も増えてき
た。しかし、それを一番必要とする業界はエンタテイメントの世界ではないだ
ろうか?クリエイターと企業の中間に立って、セラピスト的な領域からもコミ
ュニケーションを成立させることのできる人材を育成したいと願いつつ教えて
いる。