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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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うちの事務所に「井万里きよあ」という声優志望のタレントさんがいる。うち
のブッキングではアーティスト系と、こういうタレントさんを意図的に一緒に
出演させることもある。それは出演者同士がお互いに偏見を捨てて欲しいとい
う願いと、リスナーにも「良い音楽」という枠に偏った好みを入れて欲しくな
いからだ。実際に井万里の新曲は、うちのビーグルハットというバンドに作曲
をしてもらった。ビーグルハットは、この2〜3月にNHKみんなの歌でファ
ーストに収録されているビーグルハットの楽曲「白いスピッツ」が再放送され
る。97年に一度、同じ番組で流れた曲だ。昨年は、セカンド・アルバムをリ
リース後、ハード・ロック誌「Burn!」 では2ページに渡って紹介された。日
本語でありながら、洋楽指向であることがコラム担当者に気に入ってもらえた
ようだ。今回、井万里の新曲「好きになっちゃいました」の作曲、編曲、録音
まで音源制作のすべてに、このビーグルハットが関わったわけだが、しっかり
ビーグルハットのサウンドになっていることが面白い。というか、これは僕の
意図したところでもあった。一昨年、ゼティマ(現:アップフロント)が企画
するフォーク・デイズ(3回ほど制作に僕も関わった)で、モー娘。関連と高
田渡、加川良、南こうせつ等、フォーク勢のベテランとが(皆がフォークを歌
うとはいえ)同じステージに出演者として登場したことは、多くの視聴者の皆
さんには異色に思えたに違いない。僕が関係したお茶の水で開催した「フォー
ク・デイズ(フジTVのCSで毎回放送)」では、因幡晃、内藤やす子、相田
祥子という、昔なら接点のないアーティスト、タレントが同じステージに立っ
た。これも一昔前ならなかったであろう光景だ。60〜70年代に活動したア
ーティストがいわゆるタレント、アイドルの業界も評価するようになってきた
ことの現われであろうと思う。たしかに、商業性の強いタレント、アイドルの
世界に辟易することもあるだろう。しかし、「嫌だ」ではどちらも育たない。
僕がゼティマのやり方に興味を持ったのは、かつてのビートルズとボブ・ディ
ランの関係に似たものを、アーティストとアイドルの関係にダブらせてみるこ
とができたからだ。ボブ・ディランとビートルズが会ったのは、まだビードル
ズがツアーを行っていたアイドル時代のことだった。そこでビートルズはディ
ランのメッセージ性を学び、ディランはビートルズのポップ、ロックな音楽性
を学んだ。当初、ビートルズの影響から始まったディランのバンド編成という
スタイルに、ディランのファンの多くはブーイングした。しかし、彼はそれを
押し通し、70〜80年代と名盤を創り上げていくことになる。スタンスが違
ってもプロであるなら、なにかしら学び合い、共有することができるはずであ
る。当初、ビーグルハットに「アイドルの歌の作曲をお願いしたい」と僕が申
出たとき、少々戸惑ったようだった。が、録音に至る頃には、井万里とも共有
した制作意識が生まれていた。何かを作るということに、アイドルとアーティ
ストの境界線は不要だ。しかし、これを一番理解して頂きたいのは、リスナー
の皆さんに対してである。リスナーが「良い音楽」という枠組みの中で、偏見
なく音楽を楽しむなら、アーティストもタレントも成長していくだろうと思う。

ちなみに僕は70年代リアルタイム当時、プログレッシヴ・ロックが大好きで
アイドルなんてクソだと思っていたし、ハード・ロックの多くは幼稚なロック
だと思っていた。それが間違いであることを教えてくれたのがディランであり
ビートルズだった。

インフォメーション:
井万里きよあ
2月より「好きになっちゃいました」1500円発売
ビーグルハット作曲、編曲、あかみゆきえ作詞
レコーディング風景のスライドショーも収録したCDエクストラ仕様。
http://kiyotamaland.com/