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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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『Shingetsu Live 25.26 july 1979』新月
              POSEIDON Records /PRF-019
収録曲
 1. 鬼  
 2. 白唇  
 3. 朝の向こう側  
 4. 発熱の街角  
 5. 雨上がりの昼下がり  
 6. 少女は帰れない  
 7. 科学の夜  
 8. 赤い目の鏡  
 9. 殺意への船出パート2  
10. せめて今宵は  
録音ABC会館ホール 1979年7月25〜26日

70年代の日本のプログレッシヴ・ロック・バンドでは最後の頃のデヴューに
して、たった1枚の傑作アルバム『新月』を残したのみのバンド:新月。以前、
同日ライヴのオーディエンス音源がCD化されたのみで、エンジニアによるき
ちんとしたライヴ録音はこの盤が初。しかも、短命だった新月の最盛期の音源
ということもあり、その演奏力、構成力のすばらしさをあらためて耳にするこ
とができる。70〜80年代と、このレベルの日本のプログレ・バンドは少な
くなかったから、ことばの壁がなかったなら、きっと日本も世界で有数のプロ
グレ大国?になっていたろうに。(アンダーグラウンドではプログレ大国です
けど、メジャー・シーンにおいては、という意味です) 
洋楽プログレしか聴かない人からは、ジェネシスの亜流などと言われかねない
存在だった新月だが、ヴォーカルの北山真は、ジェネシスのピーター・ガブリ
エルのパフォーマンスにインスパイアされたとはいえ、日本的に消化したパフ
ォーマーであり、新月の音楽自体もけして、洋楽シーンから生まれるメロディ
はなく、随所、日本的叙情に溢れ、僕は、新月の名曲「鬼」には、そのタイト
ルにさえ痺れてしまう。かつて「鬼」とタイトルした曲があったろうか?鬼と
いう美的で攻撃的で、それでいて孤高で、ファンタジーというには、実存しそ
うな日本の神話的存在。恐さより、どこか守り神のようなイメージすらある。
退治しちゃいけません、鬼。(笑)

本アルバムは、ファーストに収録された曲の他、幻の大曲「赤い目の鏡」もラ
イヴを収録。

バンド名、タイトル、イメージに日本的なものを取り入れ、高い評価を受けた
美狂乱と共に、新月は忘れては行けないバンドだ。日本のプログレッシヴ・ロ
ック・バンドの特色のひとつとして、その叙情性を和(日本)に求め、独特で
耽美な世界を築き上げたことではないかと思う。だから、そのメロディの原点
をグループサウンズの中にあった叙情美や歌詞の耽美性にも遡れるのだ。日本
のプログレ専門レーベルの努力によって90年代になってからは、フランスの
ムゼア・レーベルなどを通して、海外にも日本のシーンが認知されようになっ
た。

が、僕が一番評価したいのは、バンドがメジャーといったシーンに遠くに位置
し、バンド活動を飯のタネと考えない分、まったく自由な創作とライヴができ
それに拘ってきたという面である。ただ、どうにもこうにも残念なのは、プロ
グレというジャンル分けの功罪で、外からは「オタクの世界」としてしか認知
されていなかったことだ。新月なんて、まったくメロディアスで、変にかしこ
まった紹介でなければ、もっと一般受けしても良かったはずだ。演奏力は高く
ても、複雑で分かり辛いことをやってるわけではない。その辺のことは、一部
のプログレ・ファンが他のハード・ロックやアメリカン・ロックをバカにして
きた報いでもあるのかもしれない。「プログレ」と呼ばれることが大切なので
はなく、その音楽が僕等を感動させてくれるかどうかが大切なのだ。

そういうわけで、「新月」未体験の方、ダマされたと思って買って聴いてみて
ください。もちろん、公式ライヴ録音とはいえ、すべてアナログの79年の機
材だから今ように、いかにもライン録りデジタル処理という音とは違います。
が、そのアナログの良さは分かる人にはわかるでしょう。

本アルバムのご購入は、こちらで。
http://www.musicterm.jp/

そういえば、『光るさざなみ』北山真 with 新月プロジェクト なんて、アル
バムをマーキー・インコーポレイティドから2000年にリリースし、驚かせてく
れ、新月再結成なんて噂もたったが。。