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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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    Tori Amos 「Welcome to Sunny Florida」DVD

トーリ・エイモスのライヴ映像を初めて観た。昨年、今頃のツアーの映像だそ
うで、未発表音源6曲入りCD付。国内盤は出ていないようだが、リージョン
フリーの盤があって、それを観た。

何年か前にフィオナ・アップルのCDを聴いてショックを受け、来日公演を観
に行って、でもちょっと普通の女の子っぽかったので、少しがっかりしたのだ
が、同じようなショックを僕に与えてくれたトーリ・エイモス。同様に「ん〜、
がっかりしたくないなぁ」と思いつつも観てみた。しかし、アルバムで聴くよ
り凄かったのだ。なんだろう?この衝撃は?。歌詞はアルバムで読んでいたの
で、この人がどういう内容の歌詞を書く人か知っている。自分自身をそこまで
晒さなくてもと思う部分は、フィオナ・アップルも同様だったが、トーリ・エ
イモスは、その歌詞の内容を克服した上で歌っているような、なんというか神
々しささえ漂わせる歌と演奏(ピアノ)だった。バックの演奏もアレンジも完
璧で2時間を超えるライヴ映像は何度も観ても飽きることはない。

どういう音楽か?とことばで説明すると誤解を受けそうだが、ミレーヌ・ファ
ルメールからアイドル性を抜き、シリアスでエキセントリックに、さらに内容
を重くした完璧な音楽?と言えばいいだろうか?同じ曲でもライヴの方がアル
バムよりもズンと伝わってくるということは、この人は十分に歌心を心得てい
るということでもあり、また、完璧さを追求する面を持ちつつも歌詞は裏返し
のように人間的でドロドロしており、人々の共感を得る内容だ。そして世界中
で1500万枚以上のアルバムを売ったというベテランの域の余裕がシリアスな歌
詞と緊張感を良い意味で中和している。初期の頃のエキセントリックで孤高な
面影は薄れたが、それに勝る、90年代〜21世紀を代表するシンガー・ソン
グライターとしての成長は、近作の穏やかな作品をその感性の広さとして、昔
からのファンをも受け入れさせる魅力がある。ビックアーティストとなって、
音楽性に変化が現れてきても、内面の繊細さ、トラウマを負ってしまった少女
の感性はまったく失われていない。だから、このような素晴らしいライヴ・パ
フォーマンスを行えるのだろう。最近観たライヴ映像ではもっとも優れた感動
した作品だ。

どうして、日本では過小評価されているのだろう?その歌詞が伝わってこない
からだろうか?国内盤DVDがリリースされないのは大きな損失だ。