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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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       細坪基佳 『十番目の肖像』『mana-zashi』 

『十番目の肖像』\3000
以下で購入可↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000E6YYA/rockjazzcom-22

聴かず嫌いというのは恐ろしい。僕には、細坪基佳というと、ふきのとう時代
の楽曲、それもTVで観て聴いた程度の印象しかなく、70年代のフォーク勢
の中では、興味の外にあったフォーク・シンガーだった。ちなみに、グレープ
(さだまさしソロも)、かぐや姫の「神田川」以降、アリスの後期などもダメ
だった。いわゆる歌謡フォークと呼ばれた人達で、曲の善し悪しとは関係なく
生理的に苦手という類。今回、CDを頂いて、正直のところあまり期待せずに
聴いてみた。それが、予想と全く違っていたのだ。

 後に紹介する『mana-zashi』の「70年代のアメリカン・ミュージックを聴
いていて好きだった・・」といった内容の記事を先に読んでおり、また、単行
本「200CDフォーク」執筆の際、座・ジローズとしての細坪ヴァージョン
の「戦争を知らないこどもたち」が、オリジナル:ジローズよりも切実な歌唱
でとても良かったこと、それで少なくとも聴こうという気になった程度だった
。1曲目はやっぱりね、という感じだったのが、2曲目からガラッと変り、懐
かしいアメリカン・ロック・テイスト。こりゃいい!ジャクソン・ブラウンみ
たいじゃん! もし、ふきのとう時代にこういう感じの曲もやっていたのなら
本当に聴かず嫌いだったこと、ごめんなさい。

もちろん、懐かしいアメリカン・ロック・テイストというものばかりでなく、
メローかつ斬新なアレンジの楽曲もあり、アルバムが一辺倒にならず、飽きる
ことなく全曲を聴終えることができる。そして、全曲聴いてから1曲目を聴く
と、これもアルバムの中で違和感のない曲であることが分かるのだ。
このアルバムを聴いて、「洋楽一辺倒だった人は、随分と日本のポピュラー・
ミュージックの良い部分を聴き逃してきたのではないか?」と思った。

『mana-zashi』\3000
こちらで購入可↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000095KZE/rockjazzcom-22

以前、友人に誘われて、新大久保にある韓国料理の店「スンデ家」へ行った。
韓国に知り合いがいて何度も行っているという友人なので、韓国料理に詳しい
のだが、韓国式料理店のシキタリ?を守っている店は、キムチや豆もやしナム
ルなどは無料で追加できるのが普通なのだそうだ。で、このスンデ家では、そ
の無料のお総菜がなんと5種類も付いてきた。店名になっている「スンデ」と
いうのは、豚の腸に「豚の血」「韓国春雨?」「野菜」「肉」等を腸詰めした
もの。血に火を通した焦げ茶色が苦手な人は、それだけで無理かもしれないが、
見た目を気にせず食せる人には美味。韓国料理の店で、韓国人が多く入ってい
る店は、料金も安く味も良い。料理以外に韓国というと、僕は何度か観に行っ
たキム・ドクスーのサムルノリの演奏くらいで、いわゆる韓国エンターテイメ
ントは、映画もほとんど見ていないし、音楽もTVで紹介される程度しか知ら
ない。

この『mana-zashi』は、韓国でヒットしたメロディアスなヒット曲を中心に収
録した、日本語歌詞によるカバー集。「イムジン河」も収録しているが、ここ
では、1968年2月にリリース直後発禁となり2002年に復刻した、日本語歌詞で
は一番最初の松山猛ヴァージョンで歌っている。実は当時、朝鮮総連の許可を
得て(とされている)、別歌詞(原詞に忠実とされている)でザ・フォーシュ
リークというグループが同年に、「リムジン江」(リムジンガンと読む)とし
てリリースしている。実際に作られたのは北朝鮮の作者によるとあるが、まだ
南北に分断されまもない頃に書かれた曲であるらしいことを考えると、これは
北朝鮮の曲でも韓国の曲でもなく、南北に分断された何の罪もない朝鮮半島国
民の祈りのような歌だ、と言った方がいい。

在日韓国人向けの日本語誌「セヌリ」というほぼ月間の小誌がある。これには
韓国のアイドルの紹介もあれば、日韓問題や北朝鮮問題、比較文化論までと幅
広い記事が掲載され、韓国事情、エンターテイメント、文化へのアプローチの
バランスが非常に良い。日本では絶対にどちらかに偏る。それは、大衆性の濃
いものは益々中味の無い消費文化へと向かい、芸術性のあるものは益々偏屈に
なり少数派の世界に閉じ籠もっていく。韓国に詳しい方達に聞くと、そういう
部分のバランスが韓国人には優れているらしいのだ。娯楽を楽しむと同時に芸
術にも興味を持つ。これが両立しないと文化は育たない。

こうして幸い日本語歌詞で歌われる韓国の歌が紹介される数少ない機会を逃し
てはならないと思う。細坪さんらしく、メロデァスな選曲になっており聴きや
すいアルバムだ。