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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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         エイベックスの内紛と結末

売上げ優先で、同じようなアーティストの輩出と露骨な自衛策(CDのコピー
ガード等)などで、まっとうな音楽ファンから批判されていたエイベックスの
この3日間(8/1-3)のお家騒動が話題となった。制作サイドと経営サイドの意
識の違いから始まったこの騒動が、浜崎あゆみ等、主要アーティスト達のエイ
ベックス決別表明という騒動まで起し、混乱の末のこのどんでん返し、レコー
ド会社としては健全な方向で落ち着くという結末は興味深い。

創立者のひとり松浦氏、前専務で浜崎あゆみの事務所アクシヴ社長:千葉氏、
両氏と、依田巽会長=社長との確執から起こった松浦氏、千葉両氏の辞任表明。
それに伴っての浜崎あゆみ等のすばやい言動。株価の急落。依田氏自身による
松浦、千葉両氏への復帰の要請。依田氏の実務辞任を条件に、松浦、千葉両氏
の復帰と、新社長として創立者のひとりである小林氏の就任で落ち着いた。

数年前にエイベックスが大人向けのレーベルを作ると発表し数枚をリリース。
その後、URCレコードの販売権を獲得し、中高年層と団塊ジュニアを狙った
展開を開始した。それらの売上げは、好調とは言わずとも黒字を生み出したと
思う。それに比較し、過去形となりつつある、松浦氏や千葉氏が育ててきたア
ーティスト達のCDの売り上げが低下し始める。さらには、エイベックスの子
会社である千葉氏のアクシヴとの経営収益に関わる確執。エイベックスが営利
至上主義に偏向していることへの松浦氏の批判。依田氏の営利戦略的失敗と責
任転嫁的な真浦、千葉氏への辞任要請などがエイベックス社外に露見し、先に
書いたような株価急落が起こり、結果、松浦、千葉氏の復帰、依田氏の実務辞
任(名誉会長=事実上退職)というどんでん返しとなったわけだ。

きっと、浜崎あゆみから始まったエイベックスの「イケイケドンドン」的な急
成長、巨大化の時期は、依田氏、松浦氏、千葉氏等は、仲良くスクラムを組ん
でいたのだど思う。が、プロデューサー職人である松浦氏は、たまたま自分が
生みだしたアーティストが売れたに過ぎないことは自覚していたのだろう。で
なければ、依田氏の望むところの「売れ筋タイプ」のアーティスト量産に同意
したはずである。ニュースで知る限りの松浦氏のことばは「エイベックスは音
楽への愛を失った。もう一度昔を思い出して新たに音楽を作りたい。」という
ものだが、たぶん、売れる売れないに関わらず、自らが好きな音楽を制作して
いきたいという松浦氏周辺と企業利益追従の依田氏との対立が騒動の原因と思
われる。松浦氏、千葉氏が戻り、経営サイドの人事異動まで起こったことは、
良い結果であったと思う。さらには、依田氏は、合わせて日本レコード協会会
長職まで辞任申請したらしい。

音楽を含むエンタテイメント業界でのこうした制作サイドと経営サイドとの確
執や騒動は実は日常茶飯事なのだが、日本では表沙汰になることは希だった。
大抵は造反者と共にその騒動がもみ消されたからだ。ある意味、松浦氏、千葉
氏の戦略的な意図があっての今回の行動であったにしても、表沙汰になるまで
発展したことは、今後、他のレコード会社の内部改革に大きな影響を与えるの
ではないかと思う。もちろん良い意味でだ。

今回の騒動が、コピーガード・システムの中止または改善(再プレスの盤から
は外すなど可能なずだ)、また、日本レコード協会の神経質なまでの輸入規制
を緩和するまでに発展することを願ってやまない。さらには、日本のレコード
会社の体質の変化を期待する。

が、何よりもことを一番大きく動かせるのは、音楽ファンの僕達自身だ。もう
一度、音楽の居心地の良い居場所を作ってあげようではないか!

野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/