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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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金子飛鳥コンサート2004 Vol.3 with 山下洋輔

日時:2004年4月23日(金)
会場:代々木八幡/Hakuju Hall
出演:金子飛鳥(vn)、山下洋輔(pf)

以前ご案内したニュー・アルバムのリリース記念というべき金子飛鳥ライヴシ
リーズの3本目であり、毎回、ご招待頂いたのだが最終回の3回目にして、や
っと時間を取って行くことができた。

代々木公園近くのハクジュ・ホールは、始めて行くコンサートホールだったが
音響設計を見る限り、クラシック演奏のためのホールだ。基本的にはPAシス
テムを通して聴くべきではないホール。この金子飛鳥、山下洋輔のセットも同
様、PA不在で、MC用のマイクがあるのみ。

僕は始めて出かけるホールは、事前にインターネットでどのようなところかチ
ェックしているので、クラシックのホールであるらしいことは、事前に分かっ
ていた。そこで一瞬、不安が過ぎった。クラシック上がりの金子飛鳥はともか
く、フリー・ジャズ出身の山下洋輔だ。今でこそ、ピアノを肘で叩くことはな
いにしても、アドリブの激しさは健在だ。バイオリンの音が負けないだろうか
とか、ホールの立派なピアノは大丈夫だろうか、などと心配してしまった。

演奏は、アルバムにも収録された山下洋輔、金子飛鳥のセットの他、数曲。心
配に反して、全部が全部、山下洋輔主導という感じではなく、きちんと金子飛
鳥を前面に出した構成であり、ホールの音響を活かした内容となっていた。普
段、PAを通した音ばかりを聴いているポピュラー・ミュージックのライター
である僕には、こうしたホールでのPA不在の演奏はとても新鮮だった。

山下洋輔のピアノが躍動感溢れる演奏になると、若干、金子飛鳥のバイオリン
が音量的に負けてしまう部分もあったが、概ね問題はなかった。そうした中に
も緊張感漂う演奏は、生の音であることがさらに緊張感をこちらへ伝えてくれ
る。普段、すべてをPAに頼っているミュージシャンは、時折、このような経
験をすべきではないか?と思ってしまった。イコライザーやコンプレッサー、
パワー・アンプに頼らず、すべて自分の演奏で強弱や音響を調整するというの
は、とても必要なことのように思う。

ライヴハウスをやっていると、ギターの音色やヴォーカルのトーンをイコライ
ザーで変えて欲しいと要求されることがある。ノイズやハウリング、反響を避
けるためなら納得いくが、トーンを変えてしまうのは如何なものか?と思って
しまうことが多々ある。「PAを通さないでも十分聴ける演奏、歌」をまず初
めに心がけるべきではないか、と思うのだ。

そういう面でもとても参考になるコンサートだった。子育ての一段落した金子
飛鳥は、実に伸び伸びしていた。更なる飛躍を期待したい。

 金子飛鳥『Betweenness』 PLAC-1001 \3,000 発売中
http://www.planet-arts.co.jp/