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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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シネマ『MINDSCAPE』
3月25日リリース/ベル・アンティーク BELLE 04891
                       
1:時の回廊   (新曲)                
2:やさしい風景 (アコースティック・バージョン)  ファースト収録
3:そよ風    (アコースティック・バージョン)   セカンド収録
4:回帰線    (FROMAGE未発表曲)
5:水の丘    (新曲)
6:岸辺のない海 (FROMAGEより)
         (ブズーキー・バージョン)
7:Departure for The Fortune  (新曲)
ボーナス・トラック
8:ラビリンス  (スタジオ・ライブ・バージョン)   ファースト収録

たぶん、シネマもフロマージュも知らない方が多いと思うので、少々前説を。

70〜80年代の関西ロック・シーンのバンドと構成メンバーを本文後に記し
たが、元祖ビジュアル系&ハード・プログレ・バンド「ノヴェラ」を前後に、
まるで英国プログレ・シーンのような人脈繋がりが見られて面白い。ノヴェラ
はメンバー・チェンジが多かったので、ここでは割愛した。

それに、フロマージュとシネマのプロフィールを書こうと思ったのだが、ファ
ミリー・ツリーそのものが複雑なため、主要なバンドを列挙することのみにし
た。もちろん以下には、中島一晃のページェントや佐藤正治の美狂乱→ヒカシ
ューという動きなど、多々抜けている。あくまでフロマージュ→シネマへの繋
がりとして書き出した一連のバンドであることをご了解頂きたい。

なぜこうしたバンドを列挙したかと言うと、各バンドのメンツをご覧頂ければ
日本のロックに詳しい方はお分かりと思うが、プロとして活躍しているミュー
ジシャンも少なくない。そうした力量のあるシーンで活動してきたバンドであ
り、「インディーズだから・・」と過小評価をして頂きたくないので長くなる
のを承知で書き出した次第だ。

フロマージュが登場した70年代後半、同じくジェネシスのようなバンドとし
て登場した新月というバンドがいる。ジェネシスような、という部分で似てい
ながら、フローマジュと新月は、叙情性という部分で共通しているものの、聴
く印象は全く違っていた。そして双方ともジェネシスとは全く違っている部分
が、その日本的叙情性なのだと思う。フロマージュは、歌詞に西洋文学の色が
あったもののメロディは日本的であった。

さて、アルバムの紹介です。
 シネマは、フロマージュのメンバーが3名存在しその音楽性を支えている。
が、たぶん当初は「フロマージュにはしない」つもりだったのではないだろう
か? 実際、過去2枚のアルバムでは、クラナドやアイオナに弦を取り入れ、
クラシカルにしたようなシンフォニックなサウンドだった。
しかし、昨年のフロマージュ復活に伴い、本作では、そうしたシネマの路線を
中和したかのように、発表済オリジナル曲をコースティック・ヴァージョンで
リメイク、さらにはフロマージュの曲をあえてシネマ風に演奏し録音している。
シネマが御茶ノ水でライヴを行った1昨年、谷口さん(シネマのドラマー)が、
もっとアコースティックにする・・・と僕に言っていたような気がする。それ
よりも以前に会場に下見に来て頂いたときに、「プログレ関連より、ワールド
・ミュージック系に宣伝した方が良いんじゃない?」といった会話も交わした
記憶もある。今回は、クラシカルかつ、アコースティック色が濃いので、いわ
ゆる変拍子、仰々しいシンフォニック好きの人には向いていないかもしれない。
(もちろん、お約束な展開をする曲もあるが、それ自体が中心ではない)
 
 しかし、自然にアコースティックで、美しいメロディと大らかな弦の響きは、
良い意味で万人受けする聴きやすさがある。とはいえ、フロマージュの未発表
曲をシネマで録音した「回帰線」は、未発表曲なのにフロマージュを知ってい
る人には「フロマージュだ!」とわかる曲に仕上がっている。そういう意味で
もフロマージュには、オリジナリティがあったのだと思う。そして、シネマの
楽曲も、いくら聴きやすいといっても、他と比較して、似たバンドが見あたら
ないオリジナリティを持っている。9分を超える新曲「水の丘」は、美しいば
かりでなく、ギターもストリングスもシンフォニックな盛り上がりを聴かせな
がらも、その抑えた美しいメロディ(この表現わかって頂けるだろうか?)は、
実際には存在しない、でもとても懐かしい記憶を心の奥深くから引き出すよう
に響き渡る。たぶん、普通のバンドなら思い切り盛り上げてしまうだろうとこ
ろを、アコースティック・ギターの音色がちゃんと聞こえる程度に抑え、しか
しシンフォニックに保つという仕上がりは見事。そして、次の曲がフロマージ
ュの12分を超える大曲「岸辺のない海」で、この展開は違和感が全くない。
シネマの演奏で蘇った「岸辺のない海」は、静の部分ではブズーキーの音色が
美しく響く。後半はお約束な展開で盛り上がります。

資料:(フロマージュ、シネマに至る関西ロック・シーンとその人脈)
▼飢餓同盟
平山照継(G) , 小西健司(B) , 安田隆(Dr)
▼安楽死
徳久恵美(Vo) , 藤井卓(G) , 浜田勝憲(B) , 上村禎徳(Key) ,
大岩(Dr)
▼マグダレーナ →テルズ・シンフォニア
徳久恵美(Vo) , 藤井卓(G) ,西口直良(B) 他
▼山水館→ノヴェラ
高橋ヨシロウ(Vo,B) , 山根基嗣(G) , 渡辺邦考(Key) ,
岡田洋(Dr) , 片岡源次郎(Dr)
▼シェラザード→ノヴェラ→テルズ・シンフォニア
平山照継(G) , 五十嵐久勝(Vo) , 大久保寿太郎(B) , 引頭英明(Dr)
秋田鋭次郎(Dr)
青方均(Key) , 永川敏郎(Key)
▼シェラザードII
大久保寿太郎(B) , 引頭英明(Dr) , 青方均(Key) , 松山マサキ(Vo)
尾崎努(G),奥田正一(Vo)
▼アクション
高橋ヨシロウ(Vo,G) , 秋田鋭次郎(Dr) , 山根基嗣(G) ,
大谷慶一(B) , 広川大介(G)
本宮日登士(Dr) , 西田竜一(Dr) , 笹井りゅうじ(B)
▼ジェラルド
永川敏郎(Key), 藤村幸宏(Vo,G) , 永井敏己(B) , 魚谷泰正(B) ,
谷本正樹(Dr),川田洋平(B) , 佐藤正治(Dr) , 五十嵐公太(Dr) ,
長谷川淳(B) ,後藤マスヒロ(Dr),ロビン・ジョージ・スーシー(Vo)
▼乱舞流(ランブル)→フロマージュ
奥田正一(Vo) , 中島一晃(G) , 永川敏郎(Key) , 新川武人(B) ,
白井雅之(Dr),亀谷奈津(Vo)
▼フロマージュ→シネマ
奥田正一(Vo) , 中島一晃(G) , 永川敏郎(Key) ,谷口裕一(Dr) ,
荻島由希夫(G),近藤芳夫(G) , 太田亨(G) , 吉川智子(Vo,Key) ,
嶋村よし江(Key) , 北村芳彦(Key),真下正樹(B) , 林智久(B) ,
田中勇次(B) , 東沢学(Vo,Fl)
▼シネマ
藤本ひろみ(Vo),太田 亨(G),北村 芳彦(Key) ,中西 則子(Vln),
真下 正樹(B) ,谷口裕一(Dr)

シネマ/フロマージュのホームページ
http://www.glass-theater.com/j.cinema.html

     野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/