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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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   ライヴハウス

 もの書き中心の仕事で、ライヴの招待にはほとんど行けた頃、短期間に随分
とあちこちのライヴハウス(以下:ハコ)に行った。100人〜200人規模
のハコは、決して良い音響環境とはいえなかった。いくつかのライヴハウスは
PA担当者にも問題があったり、タイバンの組み合わせにも無理があったりと
僕は随分と批判的な書き方をした。が、自分でハコをまわして、PAもやって
いると、どうしても限界を感じることが多々ある。

 本当なら最高級のPA機材を導入し、ハコの状態もそれにあった構造、吸音
板の設置等、考えなければいけないのだが、ここ数年は不景気で、ハコに機材
を頻繁に換える余裕もなければ、内装する財はない。それどころか、閉鎖した
お店も随分増えてきた。お客さんも「ちょっと行ってみようかな」感覚ではラ
イヴを観に行くこともなくなってしまった。アーティスト側も年齢を重ねるご
とに、良い演奏を聴かせるようになってきているものの、30代になると、彼
らのお客さんの方が仕事で忙しくなってきてしまい、お友達モードでライヴに
足を運ぶということができなくなってくる。集客の弱いバンドは、ハコにとっ
てもありがたくないから、お友達を呼べる(ノルマを達せる)若い出演者が増
えてくる。もちろん、若いアーティストさん達にも随分と演奏の上手い子はい
るが、ベテランの域には達しない。

 昨今は、路上ブームで弾き語りばかりでなく、バンドも路上でやるようにな
った。東京都内は、都の条例で指定場所に限っては、登録制にして路上演奏の
許可を出している。その辺の事情もライヴハウス出演者自体が減っている原因
かもしれないが、それはそれで文化の推移だから仕方ないと思う。ただ、路上
だけの経験しかなく、ハコが始めての子達は、どんなに演奏や歌が上手くても
マイクの使い方や機材についての知識が乏しい。ただ趣味で路上でやっている
分にはいっこうにかまわないが、なにかしら成功、夢を目指しているなら、ハ
コでの演奏や出入りを通して、機材の知識、業界的な常識を学んで欲しい。

 常識と書いたが、プロほど礼儀正しいのがこの業界だ。態度が悪かったら、
どんなに演奏が上手くても仕事はまわってこない。60年代後半〜70年代の
アーティスト達の武勇伝は良く聞くが、まだ、業界が発展途上で、今のように
人材も仕事も飽和状態ではなかったから、好き勝手ができたのだ。現在は、た
とえ新しいアーティストが向こう10年登場しなくても、腐るほど余っている
と考えた方が良い。ハコのスタッフには、業界的に影響力のある人もいる。店
長がPAを兼任し、業界に顔も利くという場合もある。どんなに小さなハコで
もプロを育てていった経験はあるはずだ。ハコのスタッフには失礼のないよう
にするべきだ。たまに横柄な態度の子がいる。こういう子は、どんなに歌や演
奏が上手くても、こちらは育てようという気がなくなる。逆に性格の良い子は
評判になり、多少なり未開拓な素材であっても、育ててくれる人との出会いの
率がぐんと上がる。
 ライヴハウスは、演奏する、歌うだけの場所ではなく、出会いの場所でもあ
る。出演者の噂が業界まで届くには、いちばん近い場所でもある。

     野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/