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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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           < 日常の音楽  >

 僕にとって日常生活の音楽は、ロックよりスタンダードなヴォーカルものの
方がしっくりとくる。これは、歳を取ったからというのでなく、子供の頃から
アンディ・ウィリアムスやレターメンのポップス、ジャズ・スタンダードのヴ
ォーカルものが好きだったからだ。ビックバンド風なバックや贅沢にストリン
グスを配した曲などを聴くと、妙に大人の気分になったものだ。60年代の映
画音楽なども流れるようなメロディの名曲が多く好きだった。しかし、音楽に
どんどんのめり込んでいった70年代はロックやシンガーソングライターが主
流となり、スタンダードな曲がラジオから流れる機会も減り、映画音楽もロッ
ク・ミュージシャンの曲が使われるなど、それまでの映画音楽然とした曲が減
っていった。

 ロックは大好きだけど、生活の雰囲気にしっくり溶け込むような、しっとり
した音楽やヴォーカルものが減ってしまい寂しいなと思ってるときに、ヒット
したのがバリー・マニロウの「哀しみのマンディ」で1975年のことだった。
実際には、この人のキャリアはもっと古く、ソングライター、コンポーザーと
して10代の頃から活動し、1970年から3年間、ベッド・ミドラーと組ん
でツアーを行っている。「哀しみのマンディ」以降のバリー・マニロウは、感
傷的なバラードを数多くヒットさせた。

 僕の部屋のCDの棚から取り出して頻繁に聴くのは、ロックよりどちらかと
いうと、こうした感傷的な歌ものの方が多い。たぶん、頭の中で難しく考えた
り、感情が高ぶって興奮することもなく、ありのままの自分を受け入れて日常
を過ごすにはこうした音楽の方が僕には向いてるのだと思う。感傷的といって
もたとえば、僕の個人的な体験とリンクしてしまったジャクソン・ブラウンの
『プリテンダー』や『ホールド・アウト』といったアルバムを聴くときと違い、
バリー・マニロウの曲での感傷は、単純な日本的なセンチメンタルに過ぎない。
ちょうど秋の深まるときの理由のないセンチメンタルな感情だ。生活の中の音
楽に意外と欠かせないのが、こうしたメロディスな音楽ではないだろうか?

もう12月、クリスマスのシーズンだ。街の商戦絡みの喧騒と共に流れるクリ
スマス・ソングは賑やかだが、伝統的なクリスマス・キャロルは、メロディア
スでしっとりしたものが多い。たまには、静かなクリスマスをメロディアスな
音楽と共に過ごしてはどうだろう。

バリー・マニロウ オフィシャル・インターナショナル・ファン・サイト
http://www.barrynet.com/

     野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/