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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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          <観点を変えて音楽を聴く>

最近、映画をよく観る。といっても劇場に行ってではなく、スカパーでの放送
やビデオなどでだ。DVDなどはメイキングや解説もあって面白い。ある邦画
のDVDを購入したら、裏音声で監督や制作者達の談話や解説が同時進行で流
れているというものがあった。制作者側の視点で語るので、普通なら気が付か
ない細部まで、頷けるような制作意図、制作方法を知ることができて面白かっ
た。僕は、これって音楽も同じだろうと思った。

たとえば、同じスタジオで作られた楽曲、同じエンジニアが制作した楽曲は違
うアーティストのまったく違った感じの曲であっても、音色が似ている場合が
多々ある。さらには、参加ミュージシャンによっても、同じアルバムに複数の
ギタリストが楽曲違いで参加していると、違ったサウンドに出来上がったりす
る。複数のドラマーが楽曲別に参加していると、ドラムのチューニングの好み
が違っていることも少なくなく、リズムの音質が全く変わってくる。
ライヴにしてもそうだ。ツアーごとにツアー・ミュージシャンを変えてしまう
ミュージシャンのライヴは、同じ曲をやっても都度、新しい発見がある。使用
楽器や機材の変化でもそれは顕著だ。

単にエンターテイメントとして上辺を全体的に観るだけだと、その音楽やライ
ヴについて「楽しかった」とか「とっても良かった」というありきたりの表現
でしか感動を伝えられない。しかし、アルバムなら参加アーティストやレコー
ディング・スタッフ、スタジオの場所など、CDのクレジットで曲ごとの違い
を知ることができる場合も多々あるし、ライヴはなるべく近くで観ることがで
きるのなら、使用機材や出演アーティストの顔色までうかがえる。もちろん歌
の歌詞を深く味わってみることだけでも、その音楽は大分違った聴き方ができ
る。そういう部分から感動を掘り下げれば良いのだ。

昨今は、あまりにたくさんの音楽が溢れ、次々と昔の音源が忘れ去られてしま
いがちだが、もう一度、手元にあるCDやライヴ・ビデオを聴き直してみては
いかがだろう。そこには、まだたくさんの知らなかったドラマが隠れているに
違いない。たとえば、前作まで起用していたミュージシャンを今回から変えて
いる、ということだけでも、そこには多数のドラマが存在しているはずだ。そ
こを憶測で探ってみるのもひとつの楽しみである。

僕は音楽ライター講座の生徒さん達に、こうした細部まで掘り下げるように音
楽を聴き、ライヴを観てみると、今までとはまったく違ったアーティストへの
評価が生まれる、と教えている。あまり興味のなかったジャンルにも、そうし
たところから触れてみると、意外と面白い音楽環境、音楽生活を発見できる。

どんな音楽も人が作ったものである以上、そこには様々なドラマが隠されてい
るはずだ。それを紐解いていくことも、その音楽を知る楽しみのひとつであり
その音楽の感動を他者へ伝える方法でもある。

     野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/ 

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