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 ◆プロ・ライター、また多方面で活躍されている野田誠司氏のコーナー◆
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必聴名盤シリーズ 『ダルシマ』りりィ TOCT-25168 東芝EMI

田家秀樹氏(1946年生まれ)監修で、東芝EMIから必聴名盤シリーズという
紙ジャケットシリーズ再発の1枚が『ダルシマ』。

 『ダルシマ』のダルシマというタイトルだがジャケットに写っているのは、
アメリカで誕生した楽器のマウンテン・ダルシマだ。ヨーロッパに広まったハ
ンマー・ダルシマとは違う。スチール弦を使用すれば、ハンマー・ダルシマに
似た音色になるが、ハンマー・ダルシマが文字通り、弦を叩く楽器であるのに
対して、マウンテン・ダルシマは、爪(ピックなど)で弾く。とはいえ、スコ
ットランドやアイルランド民謡を演奏しやすくするためのフレット配列になっ
ており、その辺りがハンマー・ダルシマからの影響であるのかもしれない。
楽器の形態は違っているが、その楽器が奏でる音楽の背景が同じということに
なる。ただしハンマー・ダルシマの原型は、イランのサントゥールという楽器
だそうで、それが、ヨーロッパのハンマー・ダルシマ(ハンガリーでは、ティ
ンバロン)や中国の揚琴(ヤンチン)へと変わっていったようだ。が、楽器の
形態はそれぞれ非常に良く似ている。先日TVで、話題の「女子十二楽坊 
(中国の民族楽器楽団)」の演奏を観たが、そこで揚琴を使っていた。音色も
ハンマー・ダルシマと全く同じだ。

 『ダルシマ』でマウンテン・ダルシマの音を聴けるのは、最初と最後の計3
曲くらいで、全体的に本作はロック・アルバムといった方が良い。その中で異
色を放つのは 3曲目の「憧れのファミレド氏」で、これは極上ポップなアイ
ドル・ソング。たまたま時代的な暗さを引きずった、翌年のヒット曲「私は泣
いています」の歌謡曲路線でりりィの名が広まってしまったが、本作に限って
言えば、全体的にとらえどころのない、にも関わらずセンスの非常に良い楽曲
を書いたりりィの本作はもっと評価されて良かった。りりィは、デヴュー前、
天井桟敷〜東京キッド・ブラザーズ人脈と関わり、三上寛と共にカルメン・マ
キ宅へ居候したものの、ある日突然いなくなり、しばらくすると帰ってくると
いう気ままな人だったそうだ(以前、マキさんから直接聞いた話)。そうした
奔放さは本作『ダルシマ』にも現れていてる。本作は、24bit リマスターで、
音全体が随分と良くなっており、アナログ盤より、楽器の音が際だっている。

りりィ オフィシャル・ホームページ
http://www.lily-yoji.com/

     野田誠司 ホームページ http://rockjazz.com/noda/ 
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