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■野田誠司氏のコラムコーナー
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プロ・ライター、また多方面でいろいろ活躍されている野田誠司氏のコーナー
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 『Ingmar〜for the beginiing〜』イングマール(川澄かおり/岩垂徳行)
  RDCD-0008 税込価格\3000(税抜定価\2857)発売元:RD Record

ヒット・ゲーム作品「グランディア」等の作曲家/岩垂徳行と「グランディア
の歌姫」こと川澄かおりのユニット/イングマールのファースト・アルバム

1970年代の中頃に、米国を中心に5分以上の曲は作るな、3分程度がちょうど
いい、といった風潮が放送業界と音楽業界の間で暗黙の了解となってしまった。
これにパンクやテクノのムーブメントが拍車をかけ、2分台の短い曲も当たり
前となってしまう。ラジオでは例外的な番組を除いては、かける曲は3分程度
でヒット性のあるものに絞られていく。それから80年代、90年代を経て、
タイアップやヘビー・ローテーションで曲の流れる時間枠を売ることが当たり
前になってしまった。大半のヒットは、金をかけて宣伝した曲ばかりになって
しまう。そんな環境の中でアーティスティックな楽曲がメジャー・シーンに登
場するわけがない。それに比べて、60年代後半〜70年代前半にかけては、
レコード片面1曲ないし組曲というアルバムがメジャー・レーベルからリリー
スされ、アルバム・チャートに登場ということは少なくなかった。別にプログ
レッシヴ・ロックばかりでなく、サイケデリックなアルバム、ブルース・ロッ
クのアルバムでも20分近い演奏を収録した盤は少なくなかった。表向きには、
アルバム指向の作品が激減ってしまったように思える昨今、いわゆるコンセプ
ト・アルバム(アルバム一枚にストーリーや統一したテーマがあるもの)の存
在さえしらないリスナーが多いのではないかと思う。長い曲やテーマを持った
アルバムを退屈と決めつけて、聴かず嫌いの人も多いのではないだろうか? 
しかし、映画やドラマ、ゲーム(RPG)などが長時間でも、作品が面白けれ
ば退屈はしないはずだ。

 今回紹介する『 Ingmar〜for the beginiing〜』は、一組の男女の転生を通
して続いていく悲恋物語がテーマとなっており、1曲だけ引き抜いてこれはヒ
ットするかも、という類のものではない。ストーリーのある歌詞と良い意味で
映画の劇伴のような流れを持つ楽曲から、そのテーマとストーリーは聴くに従
って映画のように、小説のように進んでいく。岩垂徳行の丁寧に作られた楽曲
と川澄かおりの歌詞と歌は、そのストーリーの切なさと時の流れの懐かしさを
聴き手の深層へと染み込むように浸透していく。そこにある感動は、一瞬の強
烈なものではなく、秋が夏と冬の間に挟まれて、時の流れと共に深まっていき、
心の琴線をつま弾いてくれるのに似ている。

コンセプト・アルバムというのは、けして音楽が難しいわけではない。むしろ,
聴きやすい楽曲が多い。ただ、聴く人に思考することを少なからず要求する。
想像力の豊かな人ほど、その楽しみは大きいだろう。そこに違った発見があれ
ば、あなたの音楽の聴き方はきっと大きく広がっていくはずだ。もちろん、ゲ
ーム・ミュージックなどが好きな人なら、なにかしらの世界観を持った音楽に
は慣れているだろう。ゲーム・ミュージックを手掛けている岩垂徳行の楽曲は
もちろんそのテーマとなっている世界観を深めているし、川澄かおりの書いた
歌詞も詩として独立して読めるほどに深い内容だ。(各曲の歌詞と解説は後掲
のアドレスで読むことができます)

これから少しづつ、夜が長くなっていく季節を迎えるが、そんな秋の夜長をア
ルバムを通して聴いて、その世界観に耽ってみては如何だろう?

アルバムの詳細は以下にて(購入もできるようです)
http://www5a.biglobe.ne.jp/~iwadare/ingmar/index3.html
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