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           『うつせみソナタ』柴草玲
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 9月10日(水)にお茶の水クリスチャンセンター/8Fチャペルで「LIVE
WAVE」というライヴが行われるがその出演者のひとりが柴草玲。アルバム収録
曲やプロフィールは、本文後の掲載を見て頂くとして、チカブーンのキーボー
ド奏者、大江千里、松山千春のツアー・サポート、様々なアーティストへの楽
曲提供など経歴的にもベテランに入るが、本格的なシンガー・ソングライター
としての活動は、99年からという。しかし、実は、こういうパターンのアーテ
ィストの方が丁寧に作った作品を歌う人が多い。裏方的な仕事というのは、サ
ポート奏者であっても、作詞者、作曲者、編曲者であっても、歌う人と聴く人
の気持ちを知っている。その歌う人が自分自身となり、シンガー・ソングライ
ターになるということは、自分の気持ちを十二分に知った上で丁寧に作った
「歌」を歌うはずなのだ。今回、『うつせみソナタ』に絡んで、お茶の水での
ライヴ以外にも、いくつかのライヴ、鎌倉の「歐林洞」というお店で「うつせ
みソナタ」というケーキを発売。鎌倉FMで夏の間「うつせみソナタ」という
柴草玲の番組を放送、WEBでもコラムがスタートなど、印象を統一させた見
事なコラボレーションを実施している。普通ならCDを売るためのタイアップ
で事済ませてしまうところだろうが、音と空間と食とコラムを絡ませそれらの
印象を統一させるというところに大きな違いがある。「表現したいことがある」
と心に描いたとき、シンガー・ソングライターであっても、歌以外のものを思
い浮かべるはずだ。それを静かに実らせたのが、「うつせみソナタ」なのだ。
あえて「静かに」と書いたのは、万葉集や源氏物語的な日本的な「空蝉(うつ
せみ)=虚蝉」世界のような儚さだったり、逆に「空蝉」は抜け殻であり、静
かに生まれた新しい生命力でもあるからだ。

 柴草玲の音楽にはそうした儚さと、男性にはその本質を理解できない「女性
の生命力」のようなものを感じる。不思議なのは、その儚さも生命力もどこか
同じ懐かしさを秘めていることだ。そうした点で歌詞をとても大切に書いてい
るのではないかと思う。昨今のチャートに登場する「アーティスト」と呼ばれ
る人達の「歌詞」がチープなラブ・ソングだったり、頑張りソングだったり、
歌詞というより意見や感想文のようなものだったりと、日本語の「歌」が死ん
でいくような気がする中で、柴草玲のようなシンガー・ソングライターは重要
だ。

 秋から80年代に多くのヒット曲を生んだ松本一起氏のイベントが8Fチャ
ペルと地下のアイリーンホールで始まる。その打ち合わせの中で、松本さんは
「歌詞が滅んでいくような現況を危惧している」と仰っていた。歌詞が死んで
いるから、過ぎ去ったヒット・ソングは忘れ去られていく。CDはゴミ箱へ捨
てられていく。これでは、歌い継がれていくような名曲は生まれない。歌詞が
書けなければ、プロの作詞家に任せればいい。シンガー・ソングライターは、
歌詞も曲もきちんと書ける人だけがなれば良い。すぐれたシンガー・ソングラ
イターはそんなに多くはいない。そんな数少ないシンガー・ソングライターの
ひとりが柴草玲である。

『うつせみソナタ』 2003.8.27 Release OWCP -2003 \2,100(Tax in)

プロフィール:
1992年、女性だけによるサルサバンド/チカブーンに参加。
1995年脱退後、大江千里、松山千春などのツアーサポートをする傍ら、
「強く儚い者たち」「樹海の糸」Cocco、「エメラルド海岸(作詞:
松本隆)」松田聖子などアーティストへの楽曲提供も行っている。
1999年から本格的にシンガー・ソングライターとしてソロ活動開始。

キャピタルヴィレッジによるページ(柴草玲を選択)
http://www.capital-village.co.jp/artistfile/index.html
柴草玲、本人によるホームページ
http://www003.upp.so-net.ne.jp/inureco/
オフィシャル・ホームページ
http://www.meer.co.jp/